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『微笑』(びしょう)は、横光利一の短編小説。横光の遺作で、晩年の傑作といわれることの多い作品である〔〔。作者死後の1948年(昭和23年)、雑誌『人間』(第3巻第1号)1月号に掲載され、単行本は同年3月25日に斎藤書店より刊行された。海軍の武器研究生に引き抜かれた数学の天才青年との出会いから、ある俳人が彼との心の交流、別れまでを綴った物語。敗戦の色濃い大東亜戦争末期の日本の焦燥を背景に、日本の絶対的勝利が確実となると信じ、光線照射兵器の夢を語る青年と、彼の美しい微笑に魅せられた俳人の心の軌跡が綴られ、戦中を真摯に生きた者たちの叙情が描かれている〔横光利一『機械・春は馬車に乗って』(新潮文庫、1969年)〕。 「梶」という名前の横光利一自身らしき人物を主人公にした、いわゆる「梶もの」(神谷忠孝により名付けられた〔黒田大河「『微笑』論―横光利一の戦中・戦後」(同志社大学国文学会、1995年11月)〕)の一つである。「梶もの」には他に、『厨房日記』『終点の上で』『恢復期』『罌粟の中』などがある。 == 作品背景 == 登場人物の天才青年・栖方は、井伏鱒二の回想〔井伏鱒二「埋草」(『横光利一全集』月報第17号)(改造社、1948年)〕や、鷲尾洋三の回想〔鷲尾洋三「素朴さと誠実さ」(『横光利一全集』月報第9号)(改造社、1948年)〕によると、モデルとなった青年がいて、その科学者の手で進行しつつある「素晴らしい新兵器」の話を横光から聞かされたという〔。 初出誌においては、GHQ/SCAPの検閲で大幅修正が入ると判断した雑誌編集者が、自己検閲を行なったために〔木村徳三『文芸編集者の戦中戦後』(大空社、1995年)。底本は『文芸編集者 その跫音』(TBSブリタニカ刊、1982年)〕、横光の直筆原稿とは違っているが、単行本では横光の原文どおりとなっている。これは事後検閲に推移したことによって、GHQ検閲官がすべてに目を通していなかった可能性が想定されている〔十重田裕一「横光利一の著作に見るGHQ/SCAPの検閲―『旅愁』『夜の靴』『微笑』をめぐって―」(早稲田大学大学院文学研究科紀要、2012年2月)〕。なお、同時収録の『厨房日記』は「不許可」と検閲されて、二・二六事件の勃発が欧米の植民地圧迫による影響があったと書かれている部分が、再版から削除改稿させられた〔。また戦前から書き継がれていた未完の長編『旅愁』や、『夜の靴』も検閲され、「伏せ字は絶対に許されず、削除のあとをとどめないように訂正するよう」に強制改稿させられていたことが、当時の担当編集者の日記〔木佐木勝『木佐木勝日記 第4巻(昭和19年-昭和23年)』(現代史出版会、1975年)〕やプランゲ文庫所蔵のゲラ刷りの存在から確認されている〔。このことがあったため、『微笑』は雑誌掲載時に編集者が自己検閲したのだという〔〔。 抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)』 ■ウィキペディアで「微笑 (横光利一の小説)」の詳細全文を読む スポンサード リンク
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